「うちの子」と暮らす人へ届けたい物語 コミックレビュー『ぷくちょらりファミリア』
柔らかくてかわいい。肌触りから癒してくれるぬいぐるみ。ハンドメイド作品としても一つのジャンルとして確立しており、近年ではぬいぐるみとお出かけする「ぬい活」も人気。愛好家の年齢層も、ぬいぐるみ=子ども向けと考えられていた頃に比べ、ずっと広くなっています。
今回は、持ち主にそっと寄り添ってくれているかのような存在である、ぬいぐるみが物語の主軸になっているコミックス『ぷくちょらりファミリア』をご紹介いたします。

あらすじ
親子や家族、友人や恋人───誰かとの思い出の中にいるぬいぐるみ。主人公たちは、それぞれが大切な人との別れやこれからの関係に心を揺らがせていました。そんな人生の岐路に立つ彼らに、のほほんと穏やかな表情が愛らしい、架空のキャラクターシリーズ「ぷくちょらりファミリア」のぬいぐるみたちが寄り添います。
ふと心が疲れて、くしゃっと潰れてしまいそうな夜に、あなたのもとへもぷくちょらりファミリアが来てくれるかもしれません。
(圷見南子(あくつみ なこ) / KADOKAWA)
ぬいぐるみは心に寄り添う優しい存在
いつしかぬいぐるみを愛好することは、子どもや女性に限らず、年齢も性別も関係なくなって来たことが、愛好家のひとりとしてとても嬉しいです。そんな令和に描かれた『ぷくちょらりファミリア』に登場するぬいぐるみと暮らす人々は、学生から壮年期後半までと年齢層が幅広く、性別も問いません。その誰もがぬいぐるみを愛好しながら、大切な誰かとの関わりにぬいぐるみを介していたり、思い出を重ねたりしています。
例えば病に伏した母へ大切なぬいぐるみを貸したり、友人との友情の証として同じシリーズのぬいぐるみを持ち歩いたり、少し離れて暮らすことになったパートナーとお互いのお守りにしたり。彼らの寂しい気持ちや苦しい思いに、ぬいぐるみたちは柔らかな手触りで寄り添います。もちろん何かを語ることはしませんが、まるで「大丈夫」「ひとりじゃないよ」と言ってくれている、そんな風に感じさせてくれるぬいぐるみの持つ優しさが、あたたかくオムニバス形式で描かれています。
愛好家の「いつも」を描写
ぬいぐるみに話しかけると、それにぬいぐるみが答えてくれた気がすることがある。ぬいぐるみを愛好する人にとってはよくある「いつもの風景」ですが、おそらく愛好家以外の人にとってはよくわからない感覚なのだろうと思います。生きているように扱ったり、ぬいぐるみのために新しい服を新調したりといったことも同じかもしれません。そういった愛好家のリアルな描写が自然と描写されているところも、愛好家目線でとても共感出来るポイントでした。わかる、辛い時にぬいぐるみって癒してくれるよね。大切なぬいぐるみと暮らしている方は、そんな風に頷きながらページを捲ってしまうのではないでしょうか。

さいごに
登場人物たちの中には、自分たちのぷくちょらりファミリアに思い思いの名前を付けて楽しんでいる人も。名前を付けられたぬいぐるみたちは持ち主たちの中で「その名前の子」として、固有の性格を持つようにもなっていきます。そうやって持ち主の手に渡ったらそのぬいぐるみは、持ち主の「うちの子」になっていくのです。
作品に登場するぷくちょらりファミリアのぬいぐるみたちは、小売店やゲームセンターのプライズとして持ち主の手に渡るので、いわゆる市販品ですが、これはハンドメイドのぬいぐるみたちにも言えることです。作家が作ったぬいぐるみもお迎え先の誰かの家で「うちの子」になり、持ち主の紡ぐ暮らしや人生の登場人物になるかもしれません。
ぬいぐるみ愛好家はもちろん、ぬいぐるみ作家の方にもぜひチェックしていただきたい作品です。]

