「こんな使い方があったんだ!」ディスプレイを支える発想と検索力
デザインフェスタなどのハンドメイド作品の販売イベントを取材していると、素晴らしいディスプレイの中にある什器に驚かされることがあります。什器そのもののクォリティに驚くだけでなく、よくよく聞くと本来と異なる使い方をして什器にしていたり、「これをハンドメイドの什器に!?」というものを什器として使用していたりします。
今回は魅力的なディスプレイを支える、什器についての発想や「応用する力」と、それにたどり着くための「検索する力」について、これまでの取材を通じて感じた視点からお話しします。
モチーフを「本物」として扱う
作品のモチーフに実際に使われているものを什器として取り入れることは、ディスプレイづくりのひとつの手法として確立されているように感じます。
モチーフによって向き不向きはありますが、「本物」として見立てることで、作品の世界観をより自然に演出することができます。例えば、料理や食品をモチーフにした作品であれば、調理器具や食器などのテーブルウェアを取り入れることで、キッチンや食卓、お店のような空間を作りながら展示・陳列することができます。
今回取材したデザインフェスタvol.63では、切り花をモチーフにした作品の展示に、実際の生花販売で使われているラックを使用しているブースがありました。作品を見やすく展示するという機能面だけでなく、「本物らしさ」を感じさせる演出の役割を兼ねた、作品の魅力をより引き立てる什器の使い方だと感じました。

「じゃない方」の使い方
什器選びのもうひとつの手法として、本来は什器として販売されていないものを、あえて什器として活用する方法があります。いわば「じゃない方」の使い方です。
代表的なものでは、100円均一などで販売されているディッシュスタンド。お皿を立てるためのアイテムですが、紙もの作品やポストカードを立てて展示する什器として便利なことで知られています。実際に使われているブースを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
これまでの取材では、背景布やテーブルの敷物としてカーテンを使用しているブースもありました。もちろん本来は窓に掛けるためのものですが、ブース全体の雰囲気づくりに一役買っていました。また、会計用トレイとしてアクセサリー用のトレイや小皿を使用するなど、小物ひとつをとっても「じゃない方」の使い方は数多く見られます。
ちなみに筆者が趣味で制作しているZINEをイベントで販売する際は、高さを出すための台としてアウトドア用の折りたたみテーブルを使用しています。天板のシックな木目柄がブースの雰囲気にもよく合う、お気に入りの什器です。名刺置きには、サイズのちょうどいい小皿を愛用しています。こうした本来の用途にとらわれない、応用する工夫もディスプレイづくりを楽しむコツのひとつなのかもしれません。

検索する力
取材を続けてきた中で、こうした什器選びに共通して必要だと感じたのが「検索する力」です。
ここでいう「検索する力」とは、頭の中に思い描いたイメージを形にするために、「何を」「どんな言葉で」探せば理想の什器にたどり着けるのかを考える力のこと。本物を再現するために専用の用具が必要であれば、その名称や販売ルートを調べる必要があります。「じゃない方」の使い方では、取材の際にディスプレイとして使われていたものが思いもよらない用途の商品だったことが何度もありました。背景として使われていたアーチ状の什器が、実はウェディング用の装飾のアーチだと伺った時にはとても驚いたものです。「この使い方が出来るものは何か」と、思案するところから検索はスタートしていると言っても過言ではありません。検索は、画面にキーワードを入力する瞬間から始まるわけではないのです。普段のお買い物でも、100円均一やインテリア用品店などの什器以外の売り場を歩きながら、「これを別の使い方に応用できないかな」と考えてみる。そんな小さな積み重ねが、検索力を養い、自分らしいブースづくりに近づく一歩になるのではと筆者は考えます。
さいごに
「これってディスプレイに使ったらかわいいかも!」「こんな見せ方をしたら作品がもっと素敵に見えるかも!」と考える時間は、作品を生み出す時に近いか、もしかしたら同じくらいに創作の一部であると、これまでの取材を通して感じています。
什器そのものも日々進化し、SNSではオリジナルの什器を受注販売している「什器作家」と出会うことも出来る昨今ですが、自分の頭と足を使って自分の作品のための什器をあれこれ選ぶことを楽しんでみることもまた一興です。なぜなら作品のことを一番よく知っているのは、他ならぬ作者なのですから。

