洋裁店を舞台に母娘が紡ぐほのぼのストーリー コミックレビュー『ちはるさんの娘』
いくつになってもハンドメイドを楽しみたい。「こんな風に年齢を重ねられたら」と思わずにはいられない、80歳で洋裁店を営むちはるさんと娘のちなつさんの関係性をコミカルに描いたコミック『ちはるさんの娘』をご紹介いたします。
あらすじ

洋裁業を営むちはるさん、御年80歳。娘のちなつさんはミステリー作家を生業にしていて、スープの冷めない距離にお住まい。バツイチでちはるさんに心配されていますが本人はどこ吹く風。
近所の小学生との恋バナに花を咲かせ、大好きなテレビタレントに「お嬢さん」と呼ばれたくておシャレをしちゃう若々しい乙女心を持ったちはるさんと、それを常識的にツッコむちなつさんを中心に展開される4コマコメディ作品です。
『ちはるさんの娘』(西炯子/双葉社)全4巻
いきいきと流行を謳歌するちはるさん
筆者は30代の後半に差し掛かるいわゆる「ミドサー」。年々、もっと歳を重ねてからどんな風に生活や趣味を楽しむことが出来るだろうかと考えるようになりました。そんな時に出会ったのが『ちはるさんの娘』で、主人公のちはるさんはまさにシニアライフを楽しむひとりだったのです。
イケメン大好きでアイドルにも精通しているちはるさんは好奇心旺盛。商店街にあるお肉屋さんの娘で小学5年生のまりかちゃんとも仲良し。恋バナや流行のファッションについても話に花を咲かせています。前向きでポジティブに流行りにも軽やかに乗っていく様子は、年齢を感じさせないチャーミングさがあります。
歳を重ねれば重ねるほど、「最近の曲ってわからない」「最近のアイドルってみんなおんなじに見える」なんて会話が多くなるもの。10代や20代の頃程時間もなく、興味もなくなってくるのだからわからなくなるのは自然なこと。新しいものに触れるのも体力が要るし、「みんなわからないって言ってるしいいか」と目を逸らしたくなりますが、ちはるさんを見ているとそうではない未来も素敵だなぁなんて思うようになりました。
いくつになっても“好き”を創作に取り入れたい

無理をして流行を追いかけて疲れてしまうのはよくないことですが、無理のない範囲で楽しみながら流行“も”楽しむことが出来たら、ハンドメイドを楽しむことにも活きてくるはず。
ちはるさんはあまり服に頓着のないちなつさんに度々、コーディネートを指南します。見当違いかと言えばそうでもなく、ちなつさんが嫌々ながら袖を通すと案外似合っている、ということもしばしばで洋裁とファッションを生業としている手腕を感じます。作るアイテムも流行を取り入れたものであったり、おそらく日々楽しみながら流行をちはるさんらしく取り入れた結果が洋裁業に活きているのではないでしょうか。
年齢問わずいくつになってもものづくりを楽しみ、好きなものに触れていくシニアライフ。憧れます。
さいごに
ポジティブでチャーミングなおばあちゃん、ちはるさんと出会える本作は作風自体も軽やかで創作の合間の休憩タイムにもおススメです。むすめのちなつさんをめぐる元夫や編集部の面々との恋模様も見どころ。
ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。