仕事場から見える、ものづくりの輪郭 コミックレビュー『仕事場のちょっと奥までよろしいですか?』
自分の勤め先の職場やものづくりのジャンル以外の作業場。普段目にすることが難しい誰かの“仕事場”を知ることが出来るとしたら。
今日はそんな“仕事場”と“しごと”にフォーカスしたコミックエッセイ、『仕事場のちょっと奥までよろしいですか?』を紹介いたします。
あらすじ
こけしや染物といった伝統工芸の工房から、小説家、漫画家、DIY印刷店、建築家といった手仕事以外のものづくりの現場。地域に暮らす人の“場”づくり───元書店員のイラストレーター、佐藤ジュンコさんが様々な職業やものづくりの“仕事場”へお邪魔してお話を伺います!インタビューをそのままの温度感でお届けするお仕事系コミックエッセイ。
『仕事場のちょっと奥までよろしいですか?』(佐藤ジュンコ/ポプラ社)

手仕事の現場
ある・みるメディアとして注目したいのは、伝統工芸の作り手たちの章。
工房での作業の様子や職人の世界に足を踏み入れた頃の思い出話などを、佐藤さんの柔らかなタッチで職人さんのお人柄ごとまるっと描かれています。
花火職人の佐藤佳恵さんへのインタビューでは、工場の立地や作業現場が火気厳禁で電気も極力使わないようにエアコンもないなど、設けなければならない制限について触れていて興味深い。そんな中で花火づくりに勤しみ繁忙期である夏を越え、冬場に行われている花火大会へ「花火が好きだから」足を運ぶ様子は、本当に花火が好きなのだなと心がほっと温まります。
少し変わったところでは、地域の人々の“場”を作る人として紹介された副住職の加藤さん。お坊さんのお仕事ってこうなっていたんだと、ここ数年祖母の法事でお世話になったお坊さんと重ねてみたり。街中でみかけるはんこ屋さんにも彫刻技能の国家資格があったことを本書で初めて知り、近所のはんこ屋さんの前を通る際ちょっと見る目が変わったり。
今まで何気なく見てきた誰かの仕事への解像度がちょっと上がる、そんな1冊です。

“つくること”へのリスペクト
手仕事、ものづくり、場づくり。足を運ぶ佐藤ジュンコさんから作り手たちへのリスペクトが1冊通して感じられるのも、見どころだと感じました。真摯に作り手に寄り添い、彼らが感じて来たものづくりの楽しさや大切にしてきた思いを受け止める。ちょうどいい距離感が伝わってきます。
佐藤さんだからこそ見せてくれたのだろうなと感じる“仕事場のちょっと奥”は、本当に貴重なものも多く、もっと書いてしまいたいのですが勿体ないのでこの記事を読んだ後にぜひコミックスをご確認いただきたい。
さいごに
作り手の居心地の良さや使い勝手の良さが詰まった仕事場。積み重ねてきたのは作品を作ること自体だけではなく、作る対象が繋いできた歴史や、作っているその人自身の暮らしそのものでもありました。自分以外の誰かの積み重ねを本誌で覗き見ることで、作品や環境と向き合うヒントにもなるのではないでしょうか。
ぜひ、制作の合間にチェックしてみてください。

