Theおばけモチーフなおばけが登場! 映画レビュー『A GHOST STORY』
目次
- 1.あらすじ
- 2.“おばけモチーフ”そのものなビジュアル
- 3.幽霊の表情
- 4.さいごに
秋のイベントとして定着したハロウィン。カボチャやドラキュラ、魔女に並んで良く扱われる「おばけ」のモチーフ。今回はハロウィンに因んで、白い布を被ったいかにもおばけな幽霊が登場するホラー映画、『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』をご紹介!ものづくりを描いた作品ではありませんが、ハロウィンらしい趣向でお送りいたします。
あらすじ
舞台はアメリカ、テキサスの郊外。若い夫婦のCとMは小さな一軒家を構え、仲睦まじく暮らしていました。しかし幸せはそう長くは続かず、夫のCは不慮の交通事故により急逝してしまう。妻のMが病院で夫の遺体を確認し、受け止められない現実を胸に病院を後にすると、亡くなったはずのCも遺体にかけられた白いシーツを頭から被ったまま幽霊として自宅へと戻っていった───
もちろん妻は幽霊であるCを認識することは出来ない。それでも愛する妻を見守る夫の切ない姿は、これまでのホラー映画とは一線を画す、死と愛の物語。
『セインツ-約束の果て-』『さらば愛しきアウトロー』を手掛けたD・ロウリー監督の、2017年公開作品です。
“おばけモチーフ”そのものなビジュアル
床を擦るほど長い真っ白なシーツを被り、目は黒い縦長の丸い形状の穴。幽霊となった夫のCの姿は、まさにおばけのモチーフそのもの。彼の死後の姿は作品の広告へもビジュアルとして使われているため、主人公がどうやってその姿になるのか作中での理由付けや演出が気になっていました。
実際に病院で遺体となったCが幽霊へと変貌する場面を観てみると、「だからシーツを被っているのか」と納得。彼の死を確認した妻のMがシーツをかけなおす。彼女が去ったあと、シーツは静かに膨らみ、やがて人のかたちをして起き上がっていく一連の様子は、これまで幾度となくハロウィンのモチーフのひとつとして目にしてきたおばけのモチーフたちのシーツの中にも誰かがいて、彼らももとはどこかで生きていた人間なのかもしれないと、つい思いを巡らせてしまいました。
幽霊の表情
彼の表情は、シーツに丸くあいたふたつの目(穴)と微かな仕草、そしてカメラアングルによって巧みに表現されています。シーツと目の穴という構成は変わらないのに、彼が感じている悲しみや怒り、寂しさや虚しさといった感情がしっかりとこちらに伝わってくるのがとても不思議です。おばけをモチーフとして考える際も、考え方の参考になる作品です。
さいごに
普段ホラー映画をご覧にならない方や、ホラーや心霊に苦手意識がある方は「この作品って怖いの?」とお思いになることでしょう。
この作品で描かれているのは、霊に遭遇してしまう人間ではありません。死者の視点で描かれているので、いわゆるホラー映画のような観客を驚かせるような恐怖描写はほとんどありません。心霊としての恐怖よりもむしろ、もう愛する人に感知されず、相手が自分がいない人生を生きていく姿を見守ることしかできない切なさや、全てのものから置いていかれる虚しさをメーンに描いていると感じました。ホラーが苦手な度合いによりますが、ホラー初心者でもあまり構えずに見られる作品ではないかと思います。
ハロウィンモチーフを考える際や、ハロウィン時期の制作の息抜きにおススメなので、各種サブスク等でチェックしてみてはいかがでしょうか。