編集部より
前回は、しん窯青花50周年の物語をお届けしました。
青花ブランドの原点には、「すくい易い器」に象徴される、人に寄り添うものづくりの精神があります。
その想いを未来へつなぐ方法として私たちが選んだのが、50周年記念シャツ・ブラウス「Harmony」でした。
今回は、そのHarmonyがどのように生まれたのかをお伝えします。
「器を纏う」という発想から
私たちTSUNAGUプロジェクトの始まりは、陶器ではありませんでした。
正確には、「陶器のかけら」から始まりました。
しん窯様からお預かりした陶片を使い、5人の作家がアクセサリーへと生まれ変わらせるアップサイクルプロジェクト「Éclats Bleus(エクラブル)」。
本来であれば役目を終えるはずだった陶器に、新たな命を吹き込む取り組みです。
その時に生まれたコンセプトがありました。
「器を纏う」
器を使うだけではなく、身につける。
青花の美しさや物語を、もっと身近に感じてもらう。
その考え方が、私たちの中に残り続けていました。
そして、しん窯青花50周年という節目をお祝いしたいと考えた時、真っ先に思い浮かんだのが、この言葉でした。
一枚の陶板から始まった物語
今回のシャツ・ブラウスは、既存の絵柄をそのまま使ったものではありません。
50周年という特別な節目だからこそ、新しい作品を生み出したい。
そんな想いから、しん窯青花の絵師である下平好則さんにお願いし、器に描かれている異人さんに私たちの想いをのせたオリジナル陶板を制作していただきました。
モチーフとなったのは、青花でも人気の「Harmony」シリーズ。
描かれたのは、楽器を奏でる4人の演奏家たちです。
しかし、その裏には私たちの想像を超える物語がありました。
実は16人のオーケストラだった
陶板は、窯で焼くことで色や表情が変化します。
その変化を見越して、下平さんは同じ絵を繰り返すのではなく、それぞれ異なる表情を持つ演奏家たちを描いてくださいました。
ギターを奏でる人。
キーボードを弾く人。
ピアノを演奏する人。
指揮をする人。
それぞれ4パターンずつ。
合計16人の演奏家たちです。
焼き上がった16人は、一人ひとり違う表情を持っていました。
その中から選ばれた4人が、今回のシャツ・ブラウスのデザインになっています。

なぜ「Harmony」と名付けたのか
今回のシャツ・ブラウスには、「Harmony」という名前を付けました。
その理由は、しん窯青花さんのものづくりそのものにあります。
器づくりは、一人では完成しません。
絵を描く人。
成形する人。
釉薬をかける人。
窯を守る人。
それぞれが異なる役割を担いながら、一つの器を作り上げています。
その姿は、まるでオーケストラのようです。
誰か一人が主役なのではなく、それぞれの力が重なり合うことで、美しい作品が生まれる。
私たちは、その姿を表したくて、オーケストラのモチーフ「Harmony」を名前にも選びました。
もう一つのHarmony
しかし、プロジェクトを進める中で、私たちはもう一つのHarmonyに気がつきました。
下平さんのモチーフの陶板を完成させてくださったしん窯の皆さま。
シャツ、ブラウスのデザインを数か月にわたり検討してくれたプロジェクトチーム。
オーダーメイドシャツを仕立ててくださった縫製工場の皆さま。
青花の繊細なデザインを、一枚ずつ丁寧にプリントしてくださった工房の皆さま。
振り返ると、このシャツもまた、多くの人の力によって生まれていました。
それぞれが自分の役割を持ち、それぞれの技術や想いを重ねながら、一つの作品をつくり上げていく。
その姿もまた、オーケストラのようでした。
Harmonyとは、人と人とのつながりから生まれる調和。
それこそが、このシャツに込めた本当の意味なのかもしれません。

次回予告
このHarmonyを形にするために、欠かせない存在がいました。
しん窯様の陶板をもとに、デザインデータを制作してくださった奈須香織さんです。
全国で約10人しか確認されていない希少疾患「ヒアリン線維腫症候群」と向き合いながら、自らの強みを活かして活動を続ける奈須さん。
次回は、奈須さんの物語をお届けします。