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暮らしの中の美しさに出会う、盛岡の手仕事の旅│レビュー『未来へつむぐ、手しごとの旅~市川実日子、盛岡と出逢う~』
脈々と受け継がれてきた、工芸という手仕事。
今回ご紹介する作品は、岩手県盛岡市を舞台に、俳優市川実日子が手仕事と出会う旅の様子を描いた、テレビ岩手制作のドキュメンタリー番組。『未来へつむぐ、手しごとの旅~市川実日子、盛岡と出逢う~』です。
土地に根差したものづくりを受け継ぐ人々や工芸の品々。暮らしの中で紡がれていく手仕事の風景を、一緒に覗いてみませんか?
あらすじ
岩手県盛岡市を舞台に、市川実日子さんが手仕事の現場を訪ねる旅に出ます。
初主演作の『blue』でモスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞し、『シン・ゴジラ』では日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞した彼女が、「ずっと訪れたかった」と語る盛岡。
伝統的なものづくりが受け継がれる民芸の宝庫での旅は、賑やかな「神子田朝市」からはじまります。記章、南部鉄器、浄法寺塗などの工房や販売する店舗やマルシェを訪ねながら、作り手の生き方に出会い人々の暮らしに触れていきます。
触れてみたくなる、“工芸”と“民藝”

旅の中で出会う品々の中でも、市川さんは「その土地で暮らす人が使うもの」に惹かれるのだそう。
普段使いの工芸品を地域へ紹介してきた老舗「光原社」の店名は、作家宮沢賢治が名付け親。民芸の聖地と呼ばれ、今では全国から民藝ファンが足を運びます。展示商品を手に取る市川さんは目がキラキラしていて心から民藝品を楽しんでいるのが伝わります。旅先で「自分へのお土産」を選ぶあの時間。地域が育んだ焼きものや織物を選び、手に取るワクワク感と迎える時のときめきは、何にも代えがたいものです。
東北一の鉄器の産地である盛岡の代表的な工芸品、南部鉄器。百年以上続く老舗の工房「窯定(かまさだ)」では、1300℃にもなる溶かした鉄を、型に流し込んでいく様子も紹介。圧倒的な力強さで赤い火花を散らしながら注がれる鉄に、思わず市川さんの目にも涙が浮かびます。同じ白湯でも南部鉄器で沸かせたものは風味が豊かで全く違う。ものづくりや暮らしを楽しんでいると耳にするそんな言葉の意味が、作られる現場を知ることで物の良さを実感し、自分の暮らしの中にも加えてみたくなってしまいます。
“手間を知る”

番組では全国から140組以上の作家や工房などが集った「北のクラフトフェア」第4回の開催の様子も紹介しています。会場には2024年に盛岡店をオープンした、国内外で高い評価を得ているブランド、「ミナ ペルホネン」デザイナーの皆川 明さんの姿も。
職人が日々積み重ねてきたものづくりの精度と美しさについて、「作り手の手間を知り、使う人もその手間を受け取るように使うこと」が工業製品にはない手仕事の味わいであると皆川さんは語ります。
「花王堂(かおうどう)」で作られる祝典などで身につける記章は、まさに筆者が知らなかった“手間によって作られたもの”でした。学生時代の卒入学式で何気なく見につけてきた記章の向こう側に、作り手や丁寧な手作業があることを今まで考えたことがありませんでした。市川さんが思わず「かわいい」と零したリボン製の記章。彼女のバッグにブローチとしてつけられている姿は、記章のあたらしい用途と楽しみ方を教えてくれています。
さいごに
市川実日子さんを通して見る盛岡の手仕事は、素朴で土地の暮らしそのもの。こういう営みの中にこそ、ものづくりの本質があるのかもしれません。『未来へつむぐ、手しごとの旅~市川実日子、盛岡と出逢う~』は、現在AmazonPrime、Hulu、U-NEXTなどで視聴可能です。
制作の合間に、少し手を止めて。“手間”の背景にある時間や想いに触れてみるのはいかがでしょうか。

