“巻く”ことで生まれる新たな素材表現。Éclats Bleus唐沢美佳が挑んだ「錫(すず)クイリング」
2025年10月1日から15日にかけて、東京都杉並区永福町のメリーライオンにてPOPUPショップを開催したハンドメイドユニットÉclats Bleus(エクラブル)。5名のアーティストが共通の呉須(青色)が使われた「制作過程で傷が入ってしまった陶製品」を素材にアクセサリーを制作しています。
フランス語の「青いかけら」「青いきらめき」に由来するユニット名の通り、捨てられるはずだったものに新たな命のきらめきを吹き込んでいくプロジェクトです。
前回の記事で開催の様子をお伝えしたので、今回はÉclats Bleus(エクラブル)メンバーの一員である唐沢美佳さんにお話を伺いました。
唐沢美佳
東京に拠点を置いているペーパークイリング作家。ペーパークイリングとは、細くカットした紙を巻いて作ったパーツを組み合わせて制作するペーパークラフトの一種。細やかで繊細なつくりと、紙のもつ風合いが魅力のハンドメイドジャンルです。


Éclats Bleus(エクラブル)の活動で制作した作品ではクイリングで制作したお花のパーツと陶片を組み合わせていましたが、今回のPOPUPでは新たにペーパービーズを組み合わせた作品を発表しました。
──唐沢さんのアクセサリー制作は、素材となるビーズを作ることから始まるのですね。
「クロワッサンを作る時に生地を巻くように、細く切った紙をくるくる巻いて、素材になるペーパービーズを作っています。」

──すごい繊細な作品ですね。初めて見ました。
陶片以外にも今回しん窯青花様からいただいた素材を使った作品もあるとうかがいました。どういった素材でしょう。
「しん窯青花様の包装紙です。
以前、和紙を使ったペーパービーズに挑戦したのですがピンとくるものがなくて保留にしていたことがあったんです。しん窯青花さまの陶器と包装紙の組み合わせなら、合わないはずはないと思い、ある・みるメディアを通じて包装紙をいただきました。」

──すごく合っていると思います!しん窯青花様が陶器と包装紙の世界観をしっかり合わせてらっしゃることを改めて感じますね。
「そうなんです。ペーパービーズ自体は日本では意外と昔から親しまれているらしいですよ!
今ご高齢の世代の方は新聞の折り込みチラシでペーパービーズをたくさん作って、それを繋げてのれんにしたりだとか」
──面白いですね。
「広告だと写真が使われていたり、きれいな色味のものが出来たそうですよ。」
実は素材として陶器を使うのは今回が初めてなのだそう。
──Éclats Bleus(エクラブル)の活動で制作されているアクセサリーは、傷や欠けが入ってしまった陶器が使われているそうですが、欠片の状態で受け取られたのですか?
「ある程度器の状態で届いたものを自分で切ったり割って使っています。
陶器との組合せは私にとっては初めてで、陶器をカットすることも不慣れな作業でした。柄に合わせて切ることが難しくて、形や柄はランダムなものが多いです。」
──どういった機材でカットされてるんでしょうか。
「タイル用のニッパーが良いよと教えていただいて。最初はガンッと割ろうと笑」
──豚の貯金箱を割るかのように笑
「どう割ればいいのかかわからなくて笑」
今回発表した作品には、更なる初の試みとして“錫(すず)クイリング”の作品も見ることが出来ます。

「クイリングというものを他の素材でもやってみていて。銀を使ったシルバークイリングと陶器を組み合わせてみたかったんですが、焼成の問題なのか割れてしまって。原因がわからなかったんですが、彫金の先生から錫を勧めてもらったことで錫を使ったクイリングも取り入れました。
“錫クイリング”と勝手に言っています笑 (錫クイリングで)調べても出てこないんです笑」
──パイオニアですね!
「錫を使ってアクセサリーを作っている方はたくさんいると思うのですが、私は“捻る”ではなくて“巻き”たいなって」
──指輪などで捻りを入れたデザインはよく見られます。
「ありますね。でもあんなに巻いているデザインをやろうという方はいなくて。」
──ペーパークイリングをやっているからこその発想ですね!そういった発想ってどこから出てくるのでしょうか。
「切羽詰まって、ですね。今回は特に。銀が駄目ならなんだろうって。
はんだを使うことも考えたんです。金継ぎのイメージで、ステンドグラスに使うようなものを。鉛フリーの素材を使ってみて、初めは良いと思ったんです。これでいける!と。でも鉛フリーの素材は上手く乗らなくて思うようにはいかなかったりして。」
──そこで錫に出会ったんですね。
「これだ!と思いました笑」
──本当に何度も試行錯誤を繰り返して出来上がった作品。
「その分(作品を発表するのは)ドキドキです笑」
そう話される唐沢さんの作品はこれからも工夫を重ね、新しいきらめきを得ていきます。
Éclats Bleus(エクラブル)の活動とともにぜひ注目してください。
唐沢美佳
Instagram:https://www.instagram.com/fuchsia0711?igsh=bXk2anYyamdwcTZp

