「わたしの世界を広げたジッパー」ジッパーアーティスト Rioインタビュー
今回ある・みるMEDIAがお話を伺ったのは、ジッパーアーティストのRioさん。
ファスナーを題材にし、アクセサリーを制作されているromanceinzipの主催者です。
Rioさんがファスナーを使ったアクセサリーの制作をはじめたきっかけは、国内外のファスナーのトップシェアを誇るYKKが主催していたワークショップ。参加したRioさんは、これまで洋服やバッグに使われるあくまで服飾副資材と考えていたファスナーが、アクセサリーになるなんて!と目から鱗が落ちた。
「(服飾副資材としてのファスナーは)用途が終わると廃棄されると思うんですが、そういう目立たないものをファッションアイテムとして昇華できたら、何か自分に自信が持てて、自分も輝けるんじゃないかと。ファスナーに自分を託すように考えました。」
ワークショップに参加した当時、Rioさんは仕事や育児といった実生活に行き詰まりを感じていたことで、自信を失っていました。これまでも、粘土を使ったスイーツデコや、ガラスを削って文字を書くガラスリッツェンにも挑みましたが、長続きするような情熱を持てなかった。そんな時に出会ったジッパーアートは、「自分自身も変わることが出来るかも」と思わせてくれたそうです。
「何か一つは本当に極めたい。諦めずに続けてみようって初めて思ったのが、ジッパーアートでした。」
既に先生がいるようなアートに取り組んでも、その方々を越えるような技術とかデザイン能力が自分にはない。これまで情熱を傾けられなかった経験から、痛感し身をもって知っている。
「(ジップアートという)誰もやっていないことに出会ったので、これを突き詰めてみようと思いました。」
だからこそRioさんは、まだ誰にも開拓されていないブルー・オーシャン、「自分が開拓していく道」を選んだのです。
本格的に活動を始めたRioさん。現在はイベントでの出店販売やワークショップを展開しながら、ボランティアでの社会貢献活動にも力を注いでいらっしゃいます。
この日もパーキンソン病を患う男性作家が制作した洋服をお召しになっていて。活動の売上の一部を協会へ寄付をする取り組みや、保護施設の動物たちの家族が決まった際に首輪をプレゼントしたりと、注力。男性がRioさんのInstagramをフォローしていたことが出会いのきっかけで、今後売り出していきたいと語って下さいました。
毎年東京で開催されている「TRP(東京レインボープライド)」の出店ブースに作品を提供した経験もあるとのこと。ちょうどレインボーフラッグに使われている6色が揃ったファスナーがあったのでそれを使用したキーホルダーを制作しました。ファスナーは2本だったものを締めると1本に繋がることから、性別や年齢、国籍といった異なる者同士の縁を繋げるものだというイメージ、考え方も大切にしていきたいそうです。
ジッパーアートの活動をはじめてから、Rioさんの世界はどんどん広がっていきました。しかし自ら切り拓いて行動する姿とは裏腹に、実は人付き合いは苦手なタイプと自負。何人もで連れ立って女子会やランチ会でワイワイ楽しむような場面が苦手で、ひとりで行動することも少なくはなかった。「なんで私はみんなと一緒に居られないの」と負い目に感じていましたが、ジッパーアーティストとして邁進する中で、少しずつ「ひとりで何か出来るってことはすごいことなんだ」と、自分自身のことも認められるようになりました。
自分自身で生み出した物が社会貢献などを通して(パーキンソン病の方など)誰かの役に立って、それがまた困っている誰かへの寄付に繋がる。そんなポジティブな循環をつくり出しながら、Rioさん自身にもポジティブな変化があったそうです。
Rioさんのブランド、「romanceinzip」のブランドコンセプトは「Wear your colors!」。
素材であるファスナーがおよそ660色程度あり、その色に正解も不正解もない。他者から見て似合っていなかったとしても自分が好きな色を身につけて良い。人と同じで違いは個性。その個性を身につけることで自信を持ってほしい、自分のカラーや個性を大切にしてほしいというメッセージを込めています。
服飾副資材としてのファスナーは、どうしてもベーシックなものが一般的に使われることから、なかなか色々な種類を目にすることは少ない。しかしアクセサリーの素材としてみると、こんなにも種類があったのかときっと驚かされるはず。「romanceinzip」がファスナーって面白い!と、ファスナー自体の面白さを伝えるきっかけになっていきたい。
Rioさんが作品に使用しているファスナーの世界はとても奥深い。
前述したように色合いは細やかな段階のグラデーションのようにおよそ660色も存在する。一見洋風のデザインに強いイメージがあるかもしれませんが、色の選び方や組み合わせ、たとえば水引と組み合わせるとかなり和風なデザインになったり、複数色使ったファスナーなど使用するファスナーの色によって、季節など特定のイメージに寄せたりと実はファスナーは表現の幅が広いのです。
内側にアルミフラットワイヤーを使用しているので、着脱も簡単で気軽というのも魅力。
不器用という理由からアクセサリーに苦手意識があっても身につけることが出来、調整可能なのでサイズを詳しく知らないお相手のプレゼントにもお選びいただけます。ネックレスであれば、締める位置をお洋服に合わせて変える楽しみ方も出来ます。
パッと見て「え?これがファスナーなの?」というアイテムも、「ファスナーだからこそ出来る」デザインも、どちらも作っていきたいと話すRioさん。
デザインのアイデアは制作以外の仕事の途中や、ふとした息抜きの時間、制作に関わらない部分で関わっている人と話している時などに浮かんだり、アイデアのヒントを得ることが多いのだそう。だから制作すること以外の世界も持っていること、社会と繋がっていることは大切だと語りました。
前半のお話はここまで。
後編は、活動をはじめた当時についてと、今後の展望を伺います。