織りなす感動と手仕事の美学:映画『テーラー 人生の仕立て屋』が紡ぐハンドメイドの物語
目次
- 1.あらすじ
- 2.ニコスを通してみる“ものづくり”
- 3.さいごに
ものづくり、ハンドメイドにはドラマが宿る。
手仕事を題材にした作品はこれまでも多く制作されてきました。
今回はそんなハンドメイドをテーマにした映画の中から2020年、ギリシャ・ドイツ・ベルギー合作で制作された、「テーラー 人生の仕立て屋」をご紹介いたします。
あらすじ
厳格な父と物静かな息子が二人三脚で営んできた高級スーツの仕立て屋が不況により立ち行かなくなってしまった、主人公である仕立て屋の息子、ニコス。
店は銀行を差押えられる直前な上、父が病に伏せ入院してしまう。追い詰められた彼は屋台を自作し道端でスーツを売ろうと試みるも、そう上手くはいかない。もう後がない状況の彼にひとりの女性が声をかけた。
「ウェディングドレスは作れる?」
ドレスどころか女性服を作るのも初めてのニコスのドレスづくりは上手くいくのか。
そして、父との店舗は────

ニコスを通してみる“ものづくり”
作品の冒頭、小気味良いミシンの音とともに物語の幕が上がる。
足踏みミシンにハサミ、スーツに袖を通す所作ひとつひとつから、寡黙でいかにも人付き合いが得意では無さそうなニコスの“拘り”を感じることが出来る素晴らしいオープニングだ。
一見偏屈そうに見えるニコスは、立ちいかない仕立て屋の店の経営からものづくりに対する姿勢まで父や観客が思っているよりずっと柔軟だった。
食事中パン屑が気になればテーブルクロスを、新規の顧客を得る為に必要と思えば立派な屋台も拵える。
必要であれば手間を惜しまずかたちにしていく様は見事で、言葉少ないながらもその姿を通して彼がいかにものをつくることが好きかを感じ取ることが出来る。
はじめは戸惑いの多かった女性服の製作も、近所でよくしてくれていた母娘の助けやウェディングドレスを身に纏う花嫁たちからの喜ぶ姿と言葉のおかげで、少しずつ彼の中で花開いていきます。
ニコスが趣向を凝らした美しいドレスも見どころです。
そして、彼にとってのテーラーとしての仕事とドレスづくりとはなんなのか。彼自身の人生をどう“仕立て”ていくのか。

さいごに
ハンドメイドを愛すことはひとりでもできますが、作品や制作物を販売するということはひとりでは成り立ちません。
彼の中の“ドレスづくり”が人との交わりの中で育まれたように、ハンドメイドもまた技術だけでなく人との関わりも大切なのだと感じた作品です。
彼はドレスづくりを通してある過ちを経験します。
その過ちを乗り切る姿と、上達していくドレスの美しさをぜひ見守っていただきたい。

