映画レビュー『いつかのふたり』
ものづくりにはドラマが宿る。
今回はレザークラフト通して心の交流をする、とある母娘を描いた映画、『いつかのふたり』を紹介いたします。
あらすじ
ひとり娘の真友は、もの書きになる夢を叶えるため高校卒業とともに書生として大阪に旅立つ。大阪での物件探しは別れた夫に任せ、母は娘について行っていいものか決めかねて二の足を踏んでいた。そんなある日、手芸店の店先でハンドメイドのレザーバッグが目に留まる。そのまま手芸店に入りキットを購入。
思いつきではじめたものではあったけれど、この日から母はレザークラフトの沼に見事にハマってしまった! クラフトの世界は交友関係を広げてくれたり、イベントに出展したりと母の世界は確実に広がっていく。
ある日参加したワークショップの講師からひどい出来だと批判を受け、講師を見返そうと更に行動的に。
しかしこれをきっかけに講師とその息子の関係性を通して、お互いあまり本音を言えないでいる自分と娘の関係性について向き合うことになる。
2019年公開の、長尾元監督作品です。

“ものづくり”と“母娘(おやこ)”
この物語は、レザークラフトをきっかけに親離れと子離れをしようとしていく物語でもありました。母が自分の存在が娘の夢の妨げにならないかと心配するように、娘もまた自分ルールを大事にするあまり協調性のない母をひとりおいて大阪へ行くことが心配だった。
母娘関係は簡単なようで複雑。母娘だからこそ、同性だからこそ言えない本音のようなものがあるのは珍しくない。
夫と別れてから日常としての育児をして育ててきたのは自分なのだから、娘のいない日常にぽっかり穴が開くのは当然のこと。そんな母にとって娘の真友がいない穴を埋めるものがレザークラフトだった。
趣味がひとりの母親の人生の中で、とても大事なものとして作用しているのが伝わる作品です。
ものづくりって楽しい!
初心者は思ったように作品をつくれなくて当たり前。クオリティーが低くて当たり前。真友にもその出来の悪さを指摘されますが、落ち込むどころか、「全然上手く作れないの!」と母は笑います。
それどころか、もっと早くレザークラフトを始めればよかった! なんて言うのです。真友はそれをちょっと呆れたような表情で見ていますが、上手く作れなくったってハンドメイドは楽しめるのです。
レザークラフト講師からの酷評にはさすがに落ち込むかと思いきや見てもらった後の彼女は泣くわけでなく、むしろ「先生を見返したい!」と意気込み教室に通い詰める。
もし最近の作品制作でスランプを感じていたり、制作がちょっと楽しめなくなったりしている方がいたらこの作品をおすすめしたい。
エネルギッシュに心からレザークラフトを楽しむ様子は、きっとハンドメイドを純粋に楽しんでいた時の自分と再会させてくれることでしょう。

さいごに
ハンドメイドを描いた作品は、多くが生業とした手仕事としてのものが多い中、あくまで趣味として登場するちょっと珍しい作品です。日常と人生に溶け込むハンドメイド。
趣味だからこそ共感出来る部分も多かと思います。
制作のひと休みにぜひご覧ください。

