【北欧の手仕事美学】映画『Yarn 人生を彩る糸』が紡ぐ糸とアートの旅
ものづくり、ハンドメイドにはドラマが宿る。
手仕事を題材にした作品はこれまでも多く制作されてきました。
今回はそんなハンドメイドをテーマにした映画の中から北欧アイスランド制作の「Yarn 人生を彩る糸」をご紹介いたします。
あらすじ
YARN(糸)を編むことは人生を紡ぐことなのかもしれない。
北欧アイスランドで制作された「Yarn 人生を彩る糸」は糸と編み物を、身近な手芸から飛び出してアートへと昇華させる複数アーティストと共に旅するクラフト・アート・ドキュメンタリー。
糸と編み物の旅はアイスランドからデンマークやドイツ、ポーランド、スペイン、イタリア、ハワイ、キューバとひろがり、2年程かけて撮影した。
アーティストの語るヒストリーやストイックな制作風景、それぞれの発表の様子は糸を用いたカラフルなオリジナルアニメーションによって、カラフルに彩られているのも見どころのひとつ。
アニメーションは本作の監督を務め、アニメーターとしても活躍しているウネ・ローレンツェンによるもの。
特にアーティストが作品や制作への愛を語るとき、観客が言葉だけで無くビジュアルからもその愛を受け取る手助けをしてくれる素晴らしい要素として楽しませてくれています。
手芸からアートへ
本作が追うアーティストは4組。
曽祖母と祖母から編み物を習ったティナはかぎ針編みのニットで街をゲリラ的に彩るヤーン・グラフィティ・アーティスト。
これまで家庭の中で生活にだけ寄り添ってきた、女性たちによる編み物という手仕事を街へと引っ張りだすことが彼女のアートスタイル。
オレクは出身地のポーランドからアメリカへ。彼女が渡米した理由は表現の自由を求めていたこと。
機関車から人間までかぎ編みで編み込み、色とりどりのニットのように鮮やかな驚きとともに楽しませた。
スウェーデンのコンテンポラリーサーカスのシルクールは、白い糸だけで構成された舞台を使った「Knitting Peace」という公演を行った。
「糸は色んなものの象徴であり、自在に形を変え、人生のメタファーだ」そう語るパフォーマーは細い糸の上を歩き、命がけの練習をストイックに続けて糸を通じて観客に人生を問いかける。
堀内紀子はネットを使った大型の遊具のようなアート作品を世界中で手がけている。
このアートは子どもたちが遊ぶことによって完成する。長年続けていたテキスタイル彫刻作品を発表した際、ふと作品に子どもたちが飛び乗った。
それを見た彼女は人に寄り添った作品作りを決意し、現在の大型遊具のようなアート制作に辿り着いた。
4組のアーティストによるアートは、どれも糸を使った編み物などの「編む」という手仕事から枝葉を伸ばしたもの。
観客は家庭の中に留まっていた手仕事がアートとして、これまでと違った形で人の目に触れる変化を感じ取ることが出来るだろう。
さいごに
家庭の中で育まれ、営まれてきた編み物という手仕事を街の中、社会の中へ。
彼らの信念と情熱は、とてもエネルギッシュで創作意欲を擽られながらもどこか襟を正して創作に挑みたくなる誠実さに溢れている。
これまでの女性の姿やこれからの女性の姿への希望、もしくは自分を含めた人としての人生を投影しながら紡がれていく「YARN(糸)」のドキュメンタリーを、手仕事を愛する人に薦めたい。
『Yarn 人生を彩る糸』はDVDでご覧頂けます。
DVD