裁縫箱で振り返る おばあちゃんの手仕事の思い出
目次
- 1.祖母の裁縫箱
- 2.裁縫箱の中は
- 3.祖母との裁縫の思い出
- 4.さいごに
ものづくりの記憶。
今回は趣向を変えて、筆者の実家で目にした祖母の裁縫箱と、祖母との間にあったものづくりの思い出について書いてみようと思います。制作の息抜きになると幸いです。
祖母の裁縫箱
実家に帰省した時にふと、祖母の裁縫箱が懐かしくなった。父に聞くと、2024年の秋に亡くなった祖母の遺品は父と叔母たちにより少しずつ整理されましたが、祖母がずっと使っていた裁縫箱はそのまま残してあるとのこと。整理の際に比較的すぐに取り出せるところに出しておいたようですぐに見せてもらえました。
木製のハンドル付きの裁縫箱で、筆者が幼いころからずっと祖母が使っていたものです。

一目見て、「ああそうだ。ばあちゃんが使っていた裁縫箱はこれだった」と、記憶が蘇りとても懐かしくなりました。
裁縫箱の中は
裁縫箱の蓋を開けてみると、中には衣類の裾の丈を直した残りのような端切れやゴム、スナップボタンが入っていて。残っていた糸も黒や白、ベージュ、モスグリーンといった衣類によくある色味の物ばかり。趣味の制作のためにある筆者の裁縫道具とはまったく異なり、祖母が残した裁縫箱には生活のための裁縫道具が詰まっていました。




祖母との裁縫の思い出
筆者がまだ幼い頃、祖母はよく日当たりのいい縁側で針仕事をしていました。畑仕事で着る服の丈を詰めたり、破れやほつれを直したり。一度だけ祖母に人形のスカートを縫ってもらったこともありました。人形の服なんか作ったことがなかっただろうに、その時に余っていた柄物の小さな布でスカートを縫ってくれた。思えばぬいぐるみの服作りが好きになったのは、目の前で縫い上げられる様子をあの時に見せてもらったからかもしれません。
大学に入った年の冬、古着屋でジャケットの内生地がほつれていたことに気付かず購入してしまった時には、わざわざ実家へ持って帰って繕って直してもらったことも。ジャケットの内生地が鮮やかな青のサテン地で祖母の手持ちの糸とは色が合わず、「同じ色の糸じゃないけどいいか?」と聞かれそのまま縫ってもらいました。今では筆者がパートナーの服のほつれや取れたボタンをつけ直したり繕ったりしています。してもらったことを、今度は自分や大切な人のためにする。祖母にしてもらった針仕事は、そんな風に知らず知らずの内に筆者へと受け継がれたような気がします。
さいごに
小学生の頃針仕事をする祖母の隣で手縫いをしていた時に、必要以上に糸を長く取っている僕を見て、祖母は「それじゃ“下手の長い糸”だわ」と笑った。糸にもちょうどいい長さの塩梅があることを教えてもらった出来事で、今でも糸を長く取ってしまった時にふと「下手の長い糸だなぁ」なんて言われたことを思い出します。
ものづくりが好きでハンドメイドに関する文章を書かせていただいている今、祖母との裁縫の思い出を振り返る機会をいただけて嬉しい限りです。もし機会がありましたら、ご家族の道具箱を見せてもらうと、懐かしい思い出や新たな発見がそこにはあるかもしれません。