ファンタジーの定番 魔法使いのモチーフの由来って?
2023年6月に東京都練馬区にオープンした「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京」は、映画ハリーポッターシリーズやファンタスティックビーストシリーズの世界観を楽しむことが出来る人気の施設。
両シリーズに共通する「魔法使い」や「魔法の世界」は、ハンドメイドのモチーフとしても親しみのある定番のモチーフです。
今回はそんな魔法使い──特に魔女やそれに関連するモチーフについてご紹介いたします。
魔女の歴史
現代でも魔法の文化が色濃く残るイギリスをはじめとした西洋において、魔女が世の中に登場したのは中世後期~近世にかけてのこと。占いや病の治癒や、助産師(産婆)といった民衆に近い存在でした。それが15世紀以降、裁判官が悪魔の手下と判断した女性を「魔女」と呼ぶようになり魔女による犯罪や、それを取り締まるための異端審問や魔女裁判が増えていきました。
呪い(まじない)による医療行為は西洋以外にも広く存在し、彼らは「呪術医」や「呪医」と呼ばれ今でもその役割が根強く存在する地域も世界各地に残ています。
魔法の杖

現代で魔法使いや魔女が魔法に使用するためイメージの代表格である魔法の杖。元来杖は老人が使用することから、長く生きた人間の知恵を象徴するものでした。特に中国では、老人の姿をした仙人は杖を携えて描かれることが多く、杖を龍の姿に変身させたり自分の死体に変えて自分の代わりに棺桶に入れた、という逸話も残っているほど。
中国以外の様々な文化を持つ地域でも、杖は祈祷師の道具としてよく見られます。古代エジプトでは権力の象徴で、多くの神々が杖を持った姿で描かれました。同じく古代、西ヨーロッパではケルト人の聖職であるドルイドも、樫(聖木)の杖で魔術を行ったと言われています。
とんがり帽子
魔女や魔法使いを描く際、必ずと言っていいほど身に着けているとんがり帽子は14世紀のフランス上流階級の貴婦人の間で流行した「エナン」と呼ばれる円錐状の帽子が起源といわれています。「エナン」は「角」を意味していて、角は悪魔の角を想起させる。「角」を連想させる帽子は悪魔の角の代わりのような、悪魔との繋がりともいえます。
もともとあった悪魔への恐怖心が邪悪なものへのイメージに繋がってしまった、ということですね。
とんがり帽子はその形から三角形もイメージさせます。キリスト教では三角形は霊的なモチーフと考えられていたことも影響されていたそう。
現代における魔女の服装のイメージは、19世紀以降の絵本や児童書、アニメーション作品などによって確立されたといわれています。18世紀頃までは、あまり固定的なイメージはなく様々な衣装で描かれることもあったそうです。
黒猫

日本でも不吉とされる黒猫はヨーロッパでも同様に不吉な存在とされ、中世のフランス、スペインでは呪いと不幸をもたらすと言われていました。
その由来は古く、古代エジプトまで遡ります。古代エジプトで信仰されていた猫の顔をした女神「バステト」。暗闇で猫の目が光ることから月の象徴でもありました。バステトの信仰は後にギリシアのローマ神話と融合、月の女神ディアナに深く関わりながらヨーロッパへと広がります。このディアナを信仰する信者の年に4回行われる集いは魔女集会(サバト)と呼ばれました。
サバトへの参加者が猫などの動物に扮していたことから、魔女は黒猫に変身するといわれ始めたそうです。
カラス
魔女の使いとされているカラスは古代、朝日や夕日に向かって飛ぶ習性や鳥葬の際遺体を食べることで魂を天国へ運ぶ存在から、太陽や神の使いと呼ばれ、世界各地で神聖な存在と言われていました。
やがてそれがキリスト教では同じく神の使いであった鳩との兼ね合いや生き物の死体を食べることから死を連想する、高い知能が狡猾な印象を与えるなどの理由から不吉な存在や悪魔のような扱いに。複合的な悪い印象に西洋のイメージが加わることで物語などで魔女の手下として描かれるようになったと考えられています。
さいごに
絵本や映画といった物語の登場人物としてのイメージが強い魔女、かつては実際に民衆の傍に存在していました。古代から現代にかけ、様々なことから今の魔女のイメージが時間をかけて形作られていったことがわかりますね。
魔法をモチーフにした作品の制作に役立つと幸いです。