ロゴ

【南フランス ニースのパレード 昼の部後編】

前編に引き続き南フランス、ニースでのパレードのエピソードをご紹介したい。

ニースのパレードは100万人以上の観客を動員する、ヨーロッパ最大級のパレードだ。

そんな盛り上がったパレードも最後のフロートが通り過ぎ、ついにお開きとなった。

 

訳ではなかった。

 

わらわらと人が帰り始める中、どこからともなくパレード実行部隊の若者たちが現れ始め、観客みんなに紙吹雪をかけまくる!

観客も紙吹雪を拾い集めて応戦!

 

 

最終的に「紙吹雪の雪合戦」という、文字に起こすと非常にオシャレではあるものの、実際にはかなり幼稚な遊びでパレードは締め括られることとなった。

もちろんそのような子供騙し…

拾い集めた紙片を投げ合うなどという低俗なバトルに私が参加するはずがない。

 

訳でもなかった。

 

しっかり楽しませて頂いた。

 

 

さて翌日。

朝食を買いに宿を出ると、街は昨日の喧騒が嘘のように落ち着いている。

みんな寝ているのだろうか。

おしゃれなパン屋さんで何を買おうか選んでいると、パン屋のご主人に話しかけられた。

 

 

ご主人「お前ら観光客か。パレードはどうだった。」

 

私「綺麗なフロートばかりで盛り上がってましたよ!」

 

ご主人「たまに今日やる昼のパレードを知らない奴がいるけど…お前ら知ってるか?」

 

私「え、なんですかそれ」

 

実はニースのパレードには昼の部もあったのだ!

昼の部には夜の部のような豪華なフロートが来る訳ではないけれど、ミモザの花で彩られた山車が登場し、観客に向けて沢山のミモザが投げられるらしい。

 

ご主人「ミモザの花をワイフにプレゼントすると、一年ハッピーでいられるのさ」

なんて可憐で素敵な伝統なんだ!

 

私「そしたらミモザ貰ってプレゼントするわ!」

 

妻「いいね〜、楽しみ!」

 

そんな朗らかな会話をして迎えた昼の部。

海にほど近い道路で行われているパレード。

とても華やかで、夜とは違う美しさがある!

そんなパレードには時折花だらけの山車が進み、たしかに集まる人だかりに向かって花を投げているではないか‼︎

 

 

さらに人だかりの後ろではぽつぽつと、女性だけの集団や女性1人の観客がパレードを見物している。

このパターンはもしや…

私も妻を後ろに残し、人だかりに加わることにした。

人だかりの中では…

 

男A「こっちだぁ‼︎こっちに投げろぉ‼︎」

男B「おいどけお前‼︎」

 

妻や彼女にミモザをプレゼントしたい男たちによる、ミモザの争奪戦が行われていた‼︎‼︎

え、そんな感じ!?

しかもミモザの山車はたまにしか来ないので、全く需要と供給が合っていない!

たまに近くにミモザが降ってきても、驚きの速度で奪い取られ、みんな後ろで待つ彼女にクールにプレゼントしに向かう。

妻を花も持たずに見物させる訳にはいかん‼︎

今、私は愛と情熱と力を試されている‼︎

 

私「う、うおおおお‼︎カモォォオオオン‼︎‼︎」

 

 

気付けば私も大声を張り上げ、人だかりをかき分けながらミモザ争奪戦に参加していた。

最初の一本をキャッチした際の安堵感と達成感といったら筆舌に尽くしがたい。

私は無事に格好をつけながら、後ろで待つ妻の元へミモザを届けることができた。

 

 

美しいミモザの影には、男たちの骨肉の争いが隠れているのである。

コツを掴んだ私はその後も群衆を押しのけてミモザをキャッチし続け、最終的にたくさんのミモザをプレゼントできた!

 

 

パレード後の帰り道では、同じくたくさんのミモザを持った人たちが道を歩く。

みんなあの争奪戦を経て、ミモザの花をプレゼントしているのか…

 

 

私はミモザを抱えて嬉しそうな妻を見ることに幸せを感じていたが、おそらく道を歩く多くの男性もそんな気持ちなのだろう。

そして、きっと奮闘している姿を後ろから見守ってくれていた妻と同じ気持ちを、多くの女性も感じていたのではないだろうか。

そう思うと、ミモザが彩るニースの街の景色はとても尊いものに思えた。

どんな場所でもどんな文化でも、恋人にプレゼントを贈りたい人間の気持ちは変わらないのだ。

次に行った時にも、私は全力で妻のミモザを獲得したい。

 

タカタナカ