【バヌアツ共和国 原始的集落でマイホーム作り
皆さんはDIYをすることがあるだろうか?
全くやらないという人もいれば、犬小屋くらいなら作れちゃうよ、という人もいるかもしれない。
しかし機材も資金もない中、夢のマイホームをDIYする人はなかなかいないのではなかろうか。
今回紹介するエピソードは、夢のマイホームをDIYする一人の男と、たまたま居合わせて他人のマイホームを一緒に作ることになった男の物語である。
ある年の6月。
私はオセアニアの諸島であるバヌアツ共和国に降り立った。
首都ポートビラのあるエファテ島から貨物船に乗せてもらい、目的地の火山があるタンナ島に辿り着いた。はいいものの。
タンナ島での宿泊所を見つけていなかった私は、なんやかんやあって居合わせたジョンさんという男性に助けられた。
ジョンさんのお母さんとお兄さんファミリー。
そしてジョンさんの子供たちが住む一家の集落で、しばらく生活をすることになったのだ。
集落での生活の話は長くなるので別の機会に紹介するが、そこはまさに文明から切り離された世界。
シャワーもなければ洗面所もない。落ちてきた果物がその日のおやつである。
そんな集落の中、私の泊まる場所はコンクリートでできたちょっぴり近代的な建物。
実はこちら、ジョンさんのDIYの賜物である。
(※写真の後ろの建物)
ジョンさんの住む地方では、結婚の際には男性側が自分の集落に新居を用意して新婦を迎え、7日間ぶっ通しで宴会を続けるというハードな伝統がある。
ひと昔前であれば家は男性が木材やヤシの葉で作ることができたが、今はもうみんな、木材よりも頑丈な壁、ヤシの葉よりも手入れのしやすい屋根、ガラス製の窓があることを知ってしまっている。
最高の家で新婦を迎えるという覚悟に燃えるジョンさんは、オーストラリアのバナナ農園に出稼ぎに行きつつ、3年の月日をかけて家の完成を目指しているのだ。
ジョンさんとジョンさんのガールフレンドの間にはもう既に3人のお子さんがいらっしゃるが、伝統のためまだ結婚はできない。
居候の私は、この家づくりを手伝うことになった。
貝殻や死んだ珊瑚のカケラを使って作ったという、ある意味贅沢なコンクリートが完成したのが数ヶ月前。
出稼ぎを終えて帰ってきたジョンさんが次に挑みたいのはドア作り。
このタイミングで私が集落にお邪魔していたことは幸運だっただろう。
なぜならこの辺りにはドアのある家なんてないから!!
都会にあるドアの存在は知っていても、構造をちゃんと理解している人がいないのだ!!
ジョンさん「この木の板を切って、ドアにしようと思ってる。必要なものは買ってきた。」
私「蝶番か、必要だね。でもアスファルトにはつけられないよこれ。」
ジョンさん「・・・」
私「考えてなかったのかよ!まずはドアの枠を作ろう!」
ということで、ジョンさんの友人に機材を借りた我々はドアの枠作りに取り組んだ。
(※青い服がジョンさん、緑の服は甥っ子のジョン。同じ名前なのだ。)
この機材がまぁ切れない。
写真をよく見て頂くと分かるが、高速回転で木材を焼き切っているような状態だ。
最終的にジョンさんの腕力にものを言わせながら、なんとか我々は外枠とドアそのものの枠を完成させた。
時折ジョンさんのガールフレンドが、産まれたての娘さんと共に差し入れを持ってきてくれる。
お次は木の板を切り、枠に取り付けてドアを作る。
枠に蝶番をつければ、ようやく開閉のできるドアっぽいものが完成した!!
甥っ子のジョンも学校から帰るとすぐ作業を手伝ってくれて、ここまで完成しただけで我々は雄叫びをあげていた。
しかし最難関は次の作業・・そう、ドアノブである。
ジョンさん「タカ、これはどうやってつける?」
私「これは・・」
私も全く構造がわからなかったのだ。
一緒に入っている説明図と英文を読み解きつつ(そもそもフランス領だった歴史から、英語が分かる人も多くない)なんとかドアノブ設置に取りかかった。
まずはあのガチャンってなる部分の穴を開けて・・
この金具はどうだと試行錯誤しつつ・・
なんとか取り付けるべき金具は分かってきたものの、ここで大問題が発生する。
ネジを締めるためのドライバーがないじゃないか!!!
しかしここはバヌアツ タンナ島。
ジョンさんが常に持ち歩いている牛刀で問題は解決した。
そうしてなんとか完成した家の玄関。
家の顔となる部分が出来上がった!!
ちなみにサプライズで私が用意した、日本語の「ジョンさん家」という立て札は気に入らないようで捨てられた。
私がノックをして「ハロー?」とジョンさんが出てくる。という遊びを4回ほど繰り返す程度には、我々のテンションは高まりきった。
ジョンさん「いいか、お前がバヌアツに来た時の家はここだ。
俺とお前で作ったドアがここにある。
お前が来年帰ってくる頃には、ここに床がある。色のついた壁がある。
お前はここに帰ってくるんだ。」
え、来年!?
というまさかの思い込みはあったものの「いつでも帰ってこい」と言ってくれる場所があることは嬉しいものである。
きっと彼は近いうちに、この家を完成させるだろう。
彼ら家族がこれから一生を過ごす、この家の完成に関われたことをとても光栄に思うし、2人で作ったと言ってくれることを嬉しく思う。
いつか彼が7日間ぶっ通しの宴を開いた際には、私も「ジョンさん一家の家」と書いた立て札をご祝儀代わりに参加したい。
タカタナカ