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【庭先でコロナ隔離キャンプ】

2022年6月未明。

新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい始め、もう2年以上になるその日に事件は起きた。

私が最初にこのウイルスの存在を耳にしたのは2020年1月のこと。
イスラエルにいた私は街中で子供たちに「コロナコロナ!」とからかわれ「チャイナで変なウイルスが流行っているらしい」とその場にいた大人から聞いた。

その後は田舎の国々を転々としていて何の情報も知らなかったが、4ヶ月後にはロックダウンを行ったペルーに1ヶ月間も取り残され、ことの重大さと展開の早さに衝撃を受けたものだ。
私は高い搭乗費を払い、現在の妻とともに政府が用意した臨時便に乗り込んで日本に帰ってきた。

さて話を2022年6月に戻そう。

帰国した私は結婚し、息子が生まれ、妻は2人目の子供を妊娠中。
マーケターとしての仕事も順調に進み、信頼し尊敬できるオーナーと共に会社を立ち上げている真っ最中だ。

そう。公私ともに
「今、絶対にコロナにかかるわけにはいかない…!!!」という状況である。

そんな私が“消毒ガチ勢”になるのは至極当然の流れであった。
消毒スプレーを持ち歩き、街を歩けばしょっちゅうアルコールをプッシュしている。
なんなら消毒だけしにコンビニに寄るという非常に迷惑な客と化しており、当然ワクチンも3回接種した。

「来いよコロナ。追い返してやるぜ。」そう言わんばかりに戦闘態勢は整っていたのだ。

それにも関わらず、なんだか数日前から調子が悪い。
翌週には会社で雇用した従業員やアルバイトの方々を集めた説明会を控えている。

まだまだ準備の最中だが、頭が回らない…
ついには視察の最中にフラつく始末。
これは……まずいのではないか…?

なんとか帰宅し熱を測ると…体温計に表示されていたのは…

『38.2°』

終わった!!!

これは完全にコロナだ!!!!

 

妻にアルコールを振りかけ、すぐ外に出る。

私(消毒ガチ勢のこの私がなぜ…!!
どんな途上国の水道水や食べ物でもビクともしないこの身体がなぜ…!!)

自分こそは最強の免疫を持つ男と信じていたのでショックだったが、病院に無理を言って当日のPCR検査を受けさせてもらった。

結果が出るのは翌日。
しかしこれはコロナで間違いないだろう。

まずは家族の安全を確保しなければ…!
せめて家族に移らせず自分の中だけで倒してやる!!!!

そうと決まれば方法は一つ!!!

庭で自宅隔離キャンプだ!!!!!

我が家は古いアパートだが、部屋が1階のためコンクリート打ちっぱなしの小さな庭がある。
私はそこで、自宅隔離キャンプをスタートした。

近隣の方々からすれば今度はどんな遊びを始めたのかと思われるかもしれないが、こちらは真剣そのものである。

ポップアップテントを設営して中に布団を運び入れ、自分が触れた部分は全て消毒してもらうよう妻に伝えた。
返信をしていなかった仕事関係者にお詫びの連絡をして、布団に寝そべる。

私「ふぅ…」

やっと横になることができた…
心配ごとは尽きないが、今は自分のコンディションを整えることが最優先だろう。
まずはこの布団で一眠りして、体力をつけないと…

私「………」

思えば、こんな時間から昼寝を始めるなんていつぶりだろうか…
そもそもキャンプに来ても、こんな昼間からテントの中で眠ることなどないだろう。

手の届くところには薬や飲み物…

育てている観葉植物が視界に見えて…閉ざされたちょうど良い空間…

あれ…?めちゃくちゃ快適なんじゃね…?

もしかしてこれ、普通に楽しいんじゃね…?

家族と自分を切り離すための最善策として選んだはずの庭キャンプだったが、いやいやこれ、すごく楽しいぞ。
なんか、ワクワクしてきたぞ。

妻に電話をかける。

妻「どうした?しんどい?何か欲しい?」

私「今度、普通に庭でキャンプしようか。」

妻「いや寝てくれよ。」

私は大人しく眠りについた。

翌朝。
朝日と共に少しずつ明るくなってきたテントの中で目が覚める。最高の朝だ。

たっぷり睡眠をとった身体は思いのほか軽い。
おいおい、コロナもこんなものか?私の免疫力の前に屈してしまったのか?

解熱剤を飲んでテントを開けると、風の音や虫の鳴き声が聞こえる。
東京のど真ん中でもこんなに自然を体感できるものなのか。

いいじゃないか、庭キャン。
こんな隔離生活ならずっと続けられそうだ。

気分が良い上にそもそも朝型人間な私は、一旦テントを片付けてパソコンを取り出し、仕事まで始めてしまった。

起きてきた妻が驚いた末に爆笑していたのは言うまでもない。
熱は平熱にまで下がっていた。

私(あれ、これもしかして…)

病院から電話が入る。

お医者さん「PCR検査の結果ですが…陰性です。」

やっぱりかよ!!!!!

陽性にも関わらず陰性反応が出る「隠れ陽性」のパターンもあるらしく、しばらく気をつけてはいたが、その後も体調に変化はなかったので間違いなく陰性だろう。

どうやら普通に風邪だったらしい。
まさかコロナとの大将戦ではなく普通の風邪ウイルスにやられていたとは…
免疫力最強の看板は下ろす必要があるかもしれない。

 

まとめ

体調不良の時は薬を飲み、暖かい部屋でゆっくり眠るのが鉄則だ。
今回の私は体調不良の中、外気とたいして変わらないテントの中で眠るという暴挙に出たわけだが、しかしどうだろう。結果は全快だ。

もしかすると焦るあまり、仕事に根を詰めすぎていたのかもしれない。
身体がSOSを出してくれたのだとしたら、自分の身体にしっかり感謝しよう。

どんな時でも必要なのは心の余裕と、最高の気分で起きられる朝に他ならない。

仕事で疲れた時、なんだかモヤモヤしている時、もしかしたら何より必要なのは、考えることをやめてゆったり過ごす時間なのではなかろうか。

そんな時、気軽に非日常に飛び出せるテントはおすすめだ。

「いつなんどきでもキャンプできるじゃん」

私が元気になったのは、そんなところが理由なのかもしれない。

 

タカタナカ