3泊4日無人島でキャンプ!経験談
なんだか近頃、キャンプ業界が盛り上がっている。
あらゆるキャンプの楽しみ方が発掘され、それに合わせて道具も沢山増えてきた。
その人の持つ「キャンプ道具」は「その人のキャンプそのもの」を表していると言えるだろう!
しかし…
オシャレで格好良いキャンプグッズは沢山あるが、結局自分が欲しいものってなんだっけ?
これほど情報が溢れていると、なかなか「自分に合うキャンプ道具」を見つけることは難しい。
つまりそれは「自分のキャンプ」が見つからないという意味なのだ!
これは由々しき事態!
そこで今回は、世にも珍しい「道具も助けも全然ないパターン」として、私と妻の2人で行った「無人島キャンプ」を紹介しようと思う。
とある4日間の連休を「3泊4日無人島でキャンプしよう!」と妻に提案してみた。
ノリノリで賛成した彼女はキャンプ初心者だ。
まったく肝が据わってる。
さて当日、Googleマップで見つけた岩がちの無人島に降り立った我々の荷物は、テント・寝袋・小鍋・チャッカマン・魚を獲る銛という最小限の道具たち。
それに加え、生き残る為に大量の飲み水を運び込んだ。
ちなみに持ち込んだテントは予算の都合上、数千円のワンタッチテントだ。
こうして無人島キャンプは始まった!
キャンプといえばまずは火だ。
近頃流行りの、擦って火花を起こすファイヤースターターなどここにはあるはずもない。
しかしYoutubeで予習済みの私は自信満々であった。
原始人にだってできたのだ。火を起こすことなど造作もない。
そして1時間後。
誰もいない無人島に、汗だくで木を擦り続けている男がいた。私だ。
火が起こる気配は微塵もない。
「念の為に」と持っていたチャッカマンを早速使うと簡単に火は起きた。
さぁみんな、今すぐチャッカマンを買おう!!と話を完結させたくなるほどの感動である。
しかし、むしろ大変だったのは焚き火を維持することだった。
キャンプサイトにあるような太い薪が無人島にコロコロ落ちているはずもなく、集めた枝では火はすぐに小さくなってしまい、結局必要な時に毎回1から火を起こす羽目になった。
欠かせない食料は1日2回の銛突き漁で確保する。
こちらは某テレビ番組の影響甚だしいが、釣りをして待つよりは現実的だろう。
…と、思っていたのだが、こちらも案の定全く獲れない。
それでも「妻に何か食べさせねば」と岩の隙間にいた魚を素手で掴むと背びれで手を刺された。
心配なのでスマートフォンの電源を入れて調べると毒を持っていた。
自分が自然界のヒエラルキー最下層にいることを痛感する。
しかし漁には次第に慣れ始め、少しずつ小魚を捕まえられるようになった。
最初のうちは
「大きな魚以外は狙わない。傷つけた魚は弱ってしまうのでちゃんと捕まえる。」
という心得を心に刻んでいたのだが、そのうち
「弱肉強食。捕まったのはお前の弱さ、傷ついてでも逃げたならそれはお前の強さ。真剣勝負だ。容赦はしない。」
と、野生の鉄則に従うことになった。
大きな魚を獲ると食べる身が余るので翌日漁に行かなくてよくなり、漂流物のブルーシートと流木でタープを作った。
生活の快適度が格段に上がり『蓄えがあること』の大切さを知った。
大好きなコーヒーを飲む為に毎回火を起こして水を沸かしていると、自分が普段どれだけの発明に支えられているかを知った。
夜中に迫る波の恐怖を知った。
スーパーに並ぶ食材のありがたみを知った。
岩に登って見る夕陽の美しさを、海から登る太陽の壮大さを知った。
そして、その光景を2人で独占している興奮を知った。
今回の「無人島キャンプ」で、私が最初に思い描いていた理想はほぼ実現できていない。
不便な上にオシャレでもなかったが、大切なことを学び、充実した時間を過ごし、最後には「まだここにいたい」と感じていた。
結局、「キャンプをするのに絶対この道具が必要だ」なんてものはない。
肝心なことは自分が心地良い、楽しいと思う気持ちに素直でいることだ。
まずはキャンプを楽しいと思わなきゃ、せっかく行く意味がない。
何も無人島に行かなくても、近所の公園でしばらく座ってみれば良い。
寒いと思ったら上着を、寝転びたいと思ったらシートを、落ち着きたいと思ったらテントを用意しよう。
そうして気付いた時には、きっとそこに「自分のキャンプ」があるはずだ。
我々夫婦は「無人島キャンプ」の後、使いまわせるコーヒーフィルターを買った。
キャンプだけじゃなく家でも愛用している。
タカタナカ