ロゴ

キャンプ中に遭遇する動物たち

都会の真ん中で行うグランピングならいざ知らず、キャンプは普通自然の中でするものだ。
そうすると当然、自然の住人である動物たちと遭遇することも珍しくない。

本州の一般的なキャンプサイトで見かける動物といえばタヌキやイタチ、イノシシなんかが多いだろう。
私の偏見や住んでいる地域の問題かもしれないが、シカを見かけることは珍しくてラッキーな気がする。
もしかすると、子供の頃に家族で行ったキャンプでシカを目撃し、ひどく感動した思い出が影響しているのかもしれない。

その時他に何をしたかなど全く覚えていないが、そんな“自然との遭遇”のワンシーンは今でも鮮明に覚えているものだ。
時が経ち、大人になった私はあらゆる場所でキャンプをするようになった。

あらゆる場所でキャンプをしていると、あらゆる“自然との遭遇”が待っている…
今回は、私がこれまでキャンプ中に遭遇した動物たちとのエピソードを紹介させて欲しい。

【アフリカ ナミビア】

最初に紹介するのはアフリカはナミビアでキャンプをしていた際のエピソード。

私と妻、さらに2人の友人と4人でキャンプを楽しんでいた。
キャンプ地はキャンプ好きの欧米人の私有地で、使っていない時はキャンプサイトとして貸し出しているという広い土地だ。
設備として土を固めて作った焚き火台と、それを囲むように置かれたイスとテーブル。

貯水槽を直接火で温めてお湯を作るという斬新なシャワー設備まで作られていて、所有者のキャンプ愛がそこかしこから溢れていた。
私と友人のSはすっかり上機嫌で、2人で格好をつけながら焚き火の前でワインを飲み始めた。

格好をつけていたのも束の間、すっかり酔いが回った私たちは動物の存在に気付き始める。

「何か動物の足音聞こえません?」と言い出したのはSだ。
私は「なんかいるっぽいけど、アフリカだしなぁ」と返し、2人で気にせず飲み続けていた。

しばらくして「光が全くないから星が綺麗なんじゃないか!?」と焚き火を消し、夜空を見上げていた我々は、思いの外近くで聞こえる足音にビビり始めた。

「え、なんかこの足音…重いっていうか、デカそう…?」

「さっきよりは確実に近づいてるよな…焚き火つけた方が良いかな…?」

酔いは完全に冷めきり、全身が固まっている。

その時…!
グルルル…

鳴き声がはっきりと聞こえた!

しかもすぐ近くで!!

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」

我々はワインを投げ捨てテントを張った高台に猛ダッシュ!!

猛獣でも現れたのかと思ったが、足音の正体はとてつもなく巨大な馬であった!
日本の牧場や乗馬体験で見るような馬とは比較にならない大きさだ。
しかもこの場所にはその後シマウマまで現れた!
まるでサファリパークのようで楽しそうな状況だが、街灯も柵もない真っ暗な山のど真ん中で、これほど大きな馬と遭遇する恐怖といったら並大抵ではなかった。

 

【ペルー ジャングル】

続いてはペルーのジャングル。
ジャングルはまさに生き物の宝庫だ。

近所に住む子供が釣れた(というより彼らは手掴みするのだが)魚を見せに来てくれることもしょっちゅうだったし、鳥や虫も沢山いて、生き物が側にいることに慣れきっていた。
しかしそれでも驚いたのはアルマジロだ。
夜、トイレからの帰り道、懐中電灯で森の中を照らしながら帰っていると、木の根元に絵でしか見たことのないあの硬そうな生き物がいた。
思わず真正面から光を当てて注視すると、向こうも「え、もしかして見えてますか?」といった表情でこちらを見つめてきた。
ごめん、見えてる。

その後全速力で森に帰って行った彼は人間味があって可愛らしかった。
しかしジャングルにて最も衝撃的だったのはアルマジロではない。
最後に紹介する生き物は、気付いた時にはすぐそばまで来ていた。
私は全く気付かずハンモックに揺られており、妻に声をかけられた時には驚きのあまり声が出なかった。
そこにいたのは大蛇だ。

全長は確実に2~3メートルほどある完全な大蛇。
そんなところで(ましてや上半身裸で!)ハンモックに揺られていた不用心すぎる私のことはさておき、驚いたのは少し離れたところで首を上げている大蛇と妻が見つめ合っている光景だった。

「奥さん逃げて!!」

という皆さんの声が聞こえてくるようだが、本当に不思議なことに、そこには野生と対峙した時の恐怖や威嚇などは一切なく、何故か穏やかで、とても神聖な雰囲気が流れていた。

我々がキャンプをしていた地域ではアナコンダを神の使いとする宗教観があることを知っていたことと、妻が当時悩みを抱えていたことで余計そんな風に感じたのかもしれない。(我々が遭遇したのはアナコンダではないと思うが。)

私が慌ててテントに戻り、スマートフォンの電源を入れてシャッターを押す直前まで蛇と妻は向かい合っていた。
翌日写真を見た子供たちや地域の大人も大きさに驚いていたので、常識が通用しないジャングルにおいても間違いなく大蛇と言えるだろう!
子供たちは仲間を呼んで大捜索を開始していたほどだった。

さて、以上が私の“自然との遭遇”エピソードだ。
日本ではなかなか出会えないまさかの生き物が登場して、皆さんが驚いてくれていたら嬉しい。
元々は人も動物も同じ環境で生きてきたはずだが、いつしか人は自分たちの住む場所と自然を切り離してしまった。

街を離れ自然に近付くキャンプは、そんな我々のルーツを思い出すキッカケを与えてくれるように思う。
そんな風に思うとキャンプをすることも動物を見かけることも“自然との遭遇”ではなく、ただ“自然に帰る”だけなのかもしれない。

野生動物を見つけると普通怖いものだし、実際に私とSも叫びながら走ったが、彼らも同じ地球に暮らす仲間なのだ。

当然最低限の警戒は必要で、彼らのあらゆる環境を守ることはキャンパーとして当然の配慮だが、毛嫌いせず、尊敬の心を持った距離感を心がけよう。
向こうから見たら案外我々も「え、もしかして見えてますか?」という顔をしているかもしれない。

タカタナカ